「日中不再戦」の声を今年こそ
大橋 晃
「日中不再戦」ーー日中友好運動の原点であるこの言葉が、今年は現実味を持ったものになろうとしています。
岸田首相は、「敵基地攻撃能力」の保有、軍事費の倍化などを手土産に訪米し、バイデン大統領と「敵基地攻撃」の運用で協力することを約束しました。これは「台湾有事」などに際して、自衛隊が米軍の指揮のもとに中国に攻め込むことを可能にするものです。
今年を「新たな戦前の年になる」としたタモリの発言が話題となりましたが、これも現実味を帯びたものになってきています。
私は1940年に北京で生まれ、5歳の時石家荘で終戦を迎え、翌年引き揚げました。 幼少時でしたが、戦争末期の空襲の記憶は鮮明に残っており、ウクライナの地下壕で恐怖に震える幼子を見ると、当時の記憶がフラッシュバックします。
同時に、歴史を学ぶ中で、日本が中国の人々に与えた「加害」についても深く考えるようになりました。私の父は民間人で、中国の人々に差別的なことはしていませんでしたが、私たちの存在自体が「侵略者」の一員であったことは紛れもない事実です。
「2度と被害者にも加害者にもならない」――これは生涯を貫く私の原点です。
最近の中国の軍拡や一連の理不尽ともいえる行為は確かに問題です。しかし「軍事に対して軍事」がエスカレートしていけば行きつく先は明らかです。福田康夫元首相も「日中互いに軍備を強化しあう関係でいいのか」(毎日デジタル1月1日)と言っています。
憲法9条を持つ国として、いまこそ外交的努力こそ強めるときです。そして「日中不再戦」の声を国民の間で大きく広げるときです。
〈勤医協中央病院名誉院長〉
(元道議会議員)