3月3日(土)ANAクラウンプラザホテル札幌に於いて、本庄十喜先生(北海道教育大学札幌校准教授)を迎えて記念講演会が開かれました。本庄先生は日中友好協会の会員です。
演題は【歴史修正主義の克服と歴史認識の共有を目指して━「日韓合意」「少女像」問題、そして日中韓教材対話の試みから考える━】
以下、内容をかいつまんで報告します。
【はじめに】
(1)歴史修正主義とは何か
一言で言うと「資料や証言により史実と認定されている事実を否定、歪曲する考え方」を言います。
象徴的には藤岡信勝や西岡幹二らが「新しい歴史教科書をつくる会」を発足し、従来の教科書を「自虐史観」とみなし「健全なナショナリズム」と称して1996年以降復権をめざしています。例えば、①南京虐殺はなかった。あるいは中国側で言う30万人でも、日本の歴史教科書が採用している10万~20万人でもなく、「最大で1万人」。
②日本軍による慰安所制度はなかった。「従軍慰安婦」とは性奴隷でなく「単なる商行為」「売春婦」に過ぎない。
③朝鮮の植民地化や日中戦争の責任は、ロシアや欧米の脅威に対する危機意識の欠如と、近代化が遅れた中国にある。
④1と2の問題は「国内外の反日勢力」のプロパガンダによってでっち上げられたもの等。
(2)安倍首相の慰安婦認識と歴史修正主義
これまでの安倍晋三首相の言動は、97年「日本の歴史教育を考える若手議員の会」発足(会長中川昭一、事務局長安倍晋三)。2001年NHK「女性国際戦犯法廷」番組への両氏の介入(当時安倍は官房長官)。第一次安倍政権時に「狭義の強制連行はなかった」と発言。そして衆議院予算委員会での「慰安婦狩のような強制性、官憲による強制連行を直接示す記述は見当たらない」などの答弁を行い、これに対して国際的批判や米下院での日本政府に対する謝罪決議が起こる。
同年6月「ワシントンポスト」に「慰安婦」の強制性を否定する意見広告を掲載。
【日韓合意とは】
2015年日韓外相が「慰安婦」問題に関する「合意」を共同記者会見で発表。
①日本軍関与の下、多くの韓国人女性の名誉と尊厳を傷つけた「心からのお詫びと反省」を表明。
②韓国政府が設立する財団に10億円を拠出。元慰安婦の名誉回復と心の癒しのための事業に。
③これらを前提に、今後不可逆的に解決されることを確認、今後この問題の批判を控える。
・尹炳世外交部長官が「民間団体が設置した在韓日本大使館前の『平和の像(少女像)』の撤去や移転を適切に解決するよう努力する」と表明。
・安倍首相は「70年目にして不可逆的解決をすることができた。先の世代に謝罪し続ける宿命を負わせるわけにいかない」
【その後、韓国の政権交代により「日韓合意」に関する新方針を発表】
・15年の合意は両国の公式合意だった。したがって韓国政府は再交渉は求めない。ただ、日本側が自ら、国際的な普遍基準によって真実をありのままに認めること。
・被害女性が一様に願うのは、自発的で心のこもった謝罪である。
・15年の合意は被害者たちの意思がきちんと反映されていない。
【「合意」の問題性】
①そもそも合意が文章化されていない(口約束)外交文章として極めて効力のないもの。
②被害者本人の聞き取りや打診がない。
③「慰安所」の強制性や「性奴隷」状態であったことの否定。
④案の定、2016年の参議院予算委員会で安倍首相は「性奴隷という事実はない」と答弁。岸田外相も「性奴隷という言葉は事実に反するもの」同じく岸田外相は「10億円は賠償ではない」
⑤真相究明処置・再発防止処置は言明されず。
約1時間半の講演を、紙面の関係とは言え、日中戦争当時の慰安婦の状況やこの裁判、日中韓東アジアの歴史教材対話について省略しています。なお参加者は60人と大変盛況でした。 ( 影浦貞宏)