【雑誌「世界」】昭和35年5月号の特集
劉連仁さんの思い出(5)
日中友好協会北海道連 会長 鴫谷節夫
中国人強制連行の問題は終戦直後米占領軍によって摘発された秋田県花岡事件によって知られています。
1953年3月に結成された「中国人俘虜殉難者慰霊実行委員会」は多くの民間団体が結集し、中国人強制連行殉難状況の調査・中国人殉難者の慰霊・遺骨の収集、送還などに取組み、その成果は雑誌「世界」昭和35年5月号に特集「戦時中における中国人強制連行の記録」として発表されました。特集の中心となる【報告】戦時下における中国人強制連行の記録は、38ページもあり衝撃的な内容でした。
中野好夫氏は「この報告を読んで」という4ページの文章を寄せ、花岡事件とともに劉連仁事件についても触れています
・・また本稿にも出る秋田県花岡における中国人虐殺事件などについても、詳細はともかく、一応その輪郭は知っていた。さらに一昨年明らかになった、ほとんど事実とは思えないほどの劉連仁事件なども、この問題のもつ戦慄すべき深刻さをわたしたちに反省させないではおかなかったはずだ。
・・・いまこの詳細な総合的報告を読んでみて思うことは、わたしなどが知っていると考えていたことなどは、このおそるべき巨大な事実の実に九牛の一毛というか、片鱗というか、ほとんど知っていたなどとは言えるものでないことを、いまさらながら教えられたからである。しかも加害者である日本人のわたしたちが知らなかったというところに、実に大きな問題があると思う。・・・
劉連仁事件の本質が約百人が虐殺された花岡事件と匹敵するという中野氏の指摘は、今回読み返してみて私自身深く考えさせられました。劉連仁さんが東京地裁に提訴した真意を改めていま考えています。
なおこの特集を受けて、「世界6月号」には、【座談会】われわれは中国人に何をしたか❘「中国人強制連行の記録を読んで」❘も載っています。聞く人が谷川徹三氏で、元軍人の藤田茂、国友俊太郎、五十嵐基久の3氏が話し合っています。